捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「それはご挨拶が遅れて申し訳ございません。アレスの主人をさせていただいております、ロザリア・スレイドと申します。彼は非常に優秀でいつも助けられております」
「ふふ、いいねえ。この真面目さがたまらないねっ!」
「お嬢様……その様なお褒めの言葉、もったいないことでございます」

 アレスのお父様に対する言葉や態度は冷たいけど、ふたりのやり取りから仲のいい親子だというのは理解できた。それに普段とは違うちょっと砕けたアレスが新鮮だった。

「それではお嬢様、とりあえずアレは放っておきましょう」
「あのね、アレじゃなくてお客として来たの!」
「チッ」

 アレスの舌打ちを初めて聞いて驚くけど、お客様なら丁重に対応したい。

「それは大変失礼いたしました。魔道具のご購入ですか? それともオーダーでしょうか?」
「オーダーで。竜人の番を探す魔道具を作ってほしい。これは国からの、竜王である僕からの依頼だ」

 最後の言葉に耳を疑う。

 竜王、と言った? 聞き間違いでなければ、竜王とはこの国の王にあたる方だ。最強の竜人が竜王としてこの国を治めているのだと、この国へ来たばかりのころにアレスに聞いた。

< 106 / 239 >

この作品をシェア

pagetop