捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 あんなに愛くるしく可愛い存在で、日々膨らんでくるお腹にも愛情を注いできたのに、今は別の生き物のように感じた。
 これ以上政務が滞ったら国政に影響が出てしまうのだ。この現状を目にしても、なおボクの時間を欲しいというのか?

「ボニータ、今は君の分も政務をこなしているんだ。とても余裕はない。理解してくれないか?」
「うううっ……私だってひとりの時間が寂しくても我慢してるのに……ウィル様はこんなに冷たい人だったの!?」

 まったく話の通じないのは妊娠中だからだと、何とか自分に言い聞かせて三十分だけお茶の時間につきあった。途端に笑顔になったボニータを複雑な気持ちで眺めていた。



 あれからも政務は減ることなく積み重なっていくばかりだった。
 ボニータはほぼ毎日やってきて、ボクをお茶に誘って一時間も無為な時間を過ごすハメになっている。一度きつく叱ったら大泣きされて、その日はそれ以上仕事ができなくなってしまったのだ。それを考えれば大人しくお茶に付き合って帰ってもらうのが一番だった。

「それでね、ウィル様のもっている装飾品に合わせて私も対になるようなアクセサリーが欲しいの! 今度一緒に選んでもらえないかしら?」
「ああ、政務がひと段落したらな」
「まあ! ありがとうございます! やっぱりウィル様は優しいわ」

 そう言ってニコニコと笑っているボニータが、前はとても可愛らしかった。ボクに甘えて頼りにされていると自分の自尊心が満たされていた。

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