捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「もうできたの!? 依頼してからまだ二週間だよ!?」

 竜王様の執務室は山積みの書類があふれかえり、目の下に隈を作った事務官が三人いて驚きに目を見開いていた。何やら青ざめた顔をしているのは気のせいか?

「はい、アレスのおかげです。それでは、私はこれで……」
「よし! じゃぁ、カイルに合流しよう! このまま転移しちゃうね。アレスはロザリアちゃんを守るんだよ」
「言われなくても承知している」
「ええ!? 魔道具作ったら終わりじゃないんですか!? ちょっと待って、せめて着替えを————」

 私の訴えも虚しく、魔道具開発用の見窄らしい格好のまま竜王様の転移魔法が発動される。視界が真っ白に染まる瞬間に見えたのは、竜王様を引き止めようとする事務官の方々だった。

 ごめんなさい、こうなるなんて思ってもみませんでした。本当にごめんなさい。
 届かない謝罪を心の中で繰り返すばかりだった。



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