捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「こらっ! カイル、ちゃんとお礼を言わないとダメだろっ!」
「ジュリアがこれで見つけられるのか! これはどうやって使うんだ!?」
「魔力を通せばすぐに使えます。魔石板の中で光る青い点が、捜索対象者です」
「はあ!? 魔力を通しても何にもならねえぞ!! 不良品か!?」

 血走った目のカイル様がギロリと私を睨みつける。竜王様が慌ててなだめようとして、アレスは私の腕をそっと引いてカイル様に絶対零度の視線を投げつけている。

「ちょっと、カイル! 落ち着いて!」
「お嬢様は私の後ろに下がってください」

 私に食らいつきそうな勢いでカイル様が向かってきたところで、いきなり後方に吹っ飛んでいった。さっきまで眠っていたベッドの柱に背中を打ちつけて、床に転がるように倒れ込んで呻き声をあげている。
 アレスがしっかり守ってくれたので、私は触れられることすらなかった。

「がはっ……」
「落ち着けと言っているでしょう、カイル」

 少し低めの落ち着いた声の主人は魔道具を手にして凛と佇んでいる。カイル様を吹っ飛ばした右足をそっと下ろしたのは見なかったことにした。
 腰まである黒髪を後ろでひとつに束ねた暖かみのある橙の瞳をした長身の女性が、優しく微笑みかけてくれる。

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