捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 そう言って素直に私に頭を下げてくれた。どれほどの苦悩があるか想像しかできないけど、それだけ必死なのだろう。

「いえ、大丈夫です。ただ、この魔道具は代わりがございませんので、慎重に扱っていただけると嬉しいですわ」
「そうか、わかった。あ、自己紹介もまだだったな。もう知ってると思うけどカイルだ、よろしくな。それから魔道具を開発してくれてありがとう」

 なんとなく素直な方なのだと思った。そして竜人にとって番とはとても大きな存在なのだと肌で感じる。
 竜王様もサライア様のことでスピア帝国を滅ぼしたという。それ程までに必要な存在なのだ。

「アレスの大切な人たちのためなら何てことないです。さあ、ジュリア様を探しに行きましょう!」
「っ! ああ、頼む!」


 アレスにとっても私はそんな大きな存在なのだろうか?
 そうだとしたら嬉しい、と感じる。

 ずっと側にいてくれて惜しみなく愛を注いでくれた。あまりにも渇いて麻痺していた私の心は、いつのまにか色々な感情であふれている。
 いつまでも目を逸らしていられない。
 今回の事件が片付いたら、恥ずかしがらずにちゃんと考えてみよう。


 魔道具は使い慣れている私に操作して欲しいと戻され、そのままジュリア様の捜索に加わることになった。
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