捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
22話 特別な人
「お嬢様、お口に合いませんでしたか?」
「えっ、あ、違うの。疲れてボーッとしてただけよ。アレスの料理はとても美味しいわ」
昼食中なのに、ついついアレスに見惚れて手が止まってしまっていた。
本当にこの前から自分がおかしいのはわかってる。気がつけばアレスを目で追って、その所作の美しさやキリッとした横顔に目を奪われてしまっていた。
どうしましょう。このままでは何も手がつかないわっ!
この前からずっと考えているのに、なんの答えも出せてない。アレスはますます苛烈に愛を伝えてくるし、ひとりで考える時間が欲しい……! そう、ほんの少しだけひとりになりたいのよ!!
「アレス、素材の調達を頼みたいのだけどいいかしら?」
「はい、もちろんです。何が必要ですか?」
「本当に申し訳ないのだけど……黒水晶をお願いしたいの」
ちょうど竜王様から依頼されたところだから、今頼んでしまおう。そうしたら時間が稼げるはずだ。
「承知しました。おひとつでよろしいですか?」
「竜王様にこの前の魔道具のスペアが欲しいと依頼されていて、五個欲しいの」
「五個ですか……」