捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 ボクは父上の執務室を後にしたあと、おぼつかない足取りで自分の執務室へと戻ってきた。

 いつから?
 本当に?
 どうして?

 頭の中を回るのはそんなことばかりだ。とても政務などこなせないので、今日は全員下がらせた。シンとした執務室にはボクの深いため息だけがこぼれ落ちる。
 いつの間にか月明かりが部屋を照らしていた。灯りもつけずにいたことにようやく気がつく。

 あれから何時間経ったのだろう。
 今日一日ですべてを失ってしまった。友も側近も愛しい人も。すべてが幻だった。
 アイツらは何も知らないボクをどう思っていたのか。騙されていることにも気がつかない愚かな王子だと、裏で笑っていたのか。

 ポタリと落ちた雫が机を濡らしていく。でも、もうどうでもよかった。
 こんな愚かでくだらないボクなど王子として不適合だ。幸い出来は悪いが弟がいる。ボクがこのままダメになっても構わないだろう。

 そんな投げやりなこと考えていたら、不意に部屋が明るくなった。

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