捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「ああ、やっと時間だな。では」
ウィルバート殿下の言葉に回想から現実に意識を戻した。慌ててカーテシーをしたけれど見向きもせずに、ウィルバート殿下は去っていく。入れ替わりでやってきたのはアレスだ。
「お嬢様、馬車の用意はできております。屋敷に戻りましょう」
「ええ、わかったわ」
ウィルバート殿下とのお茶が終わればその日は直帰となる。帰りの馬車の中ではダメ出しをされて落ち込む私のために、アレスがいつも優しく話しかけてくれた。
「お嬢様、今日はお茶の時間に何を考えていらしたんですか?」
「そうね……ざっくりと殿下との過去を振り返っていたわ」
「ああ、道理で目が死んでいたわけですね」
「えっ! そんな風に見えた!?」
なんてことだろう。妃教育では感情を顔に出すなとあれほど言われて、もう二年以上も経つのに身についていないなんて。
「大丈夫です。傍目には穏やかに微笑まれてました。気がつくのはお屋敷で仕える者だけです」
「ああ、よかった! ちゃんと出来ていた?」
「ええ、本当によく頑張っておられます。所作も美しくなりましたし、何よりいつも凛としているお嬢様はまるで女神のようです」
「あ、ありがとう……」
私より頭ひとつ分は背が高くなったアレスは、いつもこうやって私を励ましてくれる。だからウィルバート殿下に冷たくされるのは辛かったけど、耐えられた。
この時はまだマシだったなんて、誰が想像するだろう?
ウィルバート殿下の言葉に回想から現実に意識を戻した。慌ててカーテシーをしたけれど見向きもせずに、ウィルバート殿下は去っていく。入れ替わりでやってきたのはアレスだ。
「お嬢様、馬車の用意はできております。屋敷に戻りましょう」
「ええ、わかったわ」
ウィルバート殿下とのお茶が終わればその日は直帰となる。帰りの馬車の中ではダメ出しをされて落ち込む私のために、アレスがいつも優しく話しかけてくれた。
「お嬢様、今日はお茶の時間に何を考えていらしたんですか?」
「そうね……ざっくりと殿下との過去を振り返っていたわ」
「ああ、道理で目が死んでいたわけですね」
「えっ! そんな風に見えた!?」
なんてことだろう。妃教育では感情を顔に出すなとあれほど言われて、もう二年以上も経つのに身についていないなんて。
「大丈夫です。傍目には穏やかに微笑まれてました。気がつくのはお屋敷で仕える者だけです」
「ああ、よかった! ちゃんと出来ていた?」
「ええ、本当によく頑張っておられます。所作も美しくなりましたし、何よりいつも凛としているお嬢様はまるで女神のようです」
「あ、ありがとう……」
私より頭ひとつ分は背が高くなったアレスは、いつもこうやって私を励ましてくれる。だからウィルバート殿下に冷たくされるのは辛かったけど、耐えられた。
この時はまだマシだったなんて、誰が想像するだろう?