捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 子供の頃からボクを知っている宰相は、真面目な顔で真っ直ぐに見つめてきた。

「よく思い出してください。ウィルバート殿下に真摯に向き合った方がおひとりだけいらっしゃいます。おわかりになりますか?」
「……そのような者はいないではないか」
「ロザリア様です。あの方だけが誠実に殿下に対応されておりました。私が信頼できたのはあの方だけでございます」
「はっ! ロザリアだと? アイツはいつも私をバカにしてきたではないか」

 最初に会った時からそうだった。さも自分は賢いというような態度だったんだ。冴えない格好のくせにツンとすまして、生意気そうな目でボクを見下していたんだ。
 そうだ、他の令嬢のようにボクにうっとりすることなく淡々としていたから、いつも劣等感を煽られていて直視できなかった。

「本当にそうですか? ロザリア様はそのようなことをおっしゃいましたか?」
「…………」
「殿下、これからはどうか信頼するべき相手を間違えないでください。本当に殿下に尽くしていた方がどなたなのか、よく考えてください」

 そう言って宰相は頭を下げて執務室から去っていった。
 残されたボクはうまく回らない頭でその言葉を噛みしめた。
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