捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 ファンク男爵一族は公開処刑。ボニータは出産後に同じく公開処刑。ハルクとゴードンは廃嫡の上、国外追放。
 子には罪がないので地方都市の孤児院に密かに預けられることになる。

『本当に殿下に尽くしていた方がどなたなのか、よく考えてください』

 再び宰相の最後の言葉が浮かんできた。

 ロザリアが?
 あんな地味で生意気な女がボクに尽くしていただって?
 あんな————

『ウィルバート殿下、今日のドレスはどうでしょう? 気に入っていただけると嬉しいのですが……』
『ウィルバート殿下。至らなくて申し訳ございません。次の夜会からは歩きやすいヒールにいたします』
『公爵様は私の実家が販売した魔道具についてお尋ねになられたのです。後で手紙でもお答えできる内容でしたのに、不快にさせて申し訳ございませんでした』
『ウィルバート殿下、伝言がございまして……』
『ウィルバート殿下』

 思い浮かぶのは穏やかで優し気なロザリアばかりだ。ボニータのようにわがままを言うこともなく、いつも少しだけ悲しそうに微笑んでいた。
 そして唐突に宰相の言葉を理解する。
 そうだ、ロザリアだけがずっと変わらずボクに尽くしてくれていた。それを跳ねのけていたのはボク自身だ。

「ロザリア……ロザリア! そんな、ボクはなんていうことを……ロザリアッ!!」

 どんなに後悔してロザリアの名前を呼んでも、静まり返った部屋に消えていくだけだった。



< 152 / 239 >

この作品をシェア

pagetop