捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
     * * *



「ちょっと、ハルク!! 聞こえてるんでしょう! 何とかしてよ! こんな時のためにアンタと寝てたのに、全然役に立たないじゃないっ!!」
「うるさいっ! お前の口車に乗らなければ、今頃は殿下の側近でいられたんだ! お前が誘ってきたからだ!」
「そうだ! ボニータが絶対にバレないっていうから……だから! 約束が違うだろ!?」
「はっ! ハルクもゴードンもバカなの!? アンタたちが側近だから使い勝手良さそうだと思って相手をしてあげただけじゃない!」
「何だと!? 碌に政務もこなせない低能が何をいう!」
「オレの気持ちを弄んでたのか……ボニータ! お前、許さねえ!!」

 独房に移されてもなお三人は延々とお互いを罵り合っていた。真摯に自分の役目を全うしていれば、ここにいることはなかったのにそのことには誰も気がつかない。聞くに堪えない罵詈雑言に独房の看守は辟易した。

「お前らうるさいぞ! そんなに元気があるなら飯は抜きだ! いいか、静かになるまで飯は運んでこないからな!」
「そんなっ……ごめんなさい! 何でもしますから!」
「待てっ! それは規律違反だろう!?」
「飯は持ってきてくれよ! 頼むよ!」
「だったらその薄汚え口閉じて黙ってろ!!」

 やっと喚き声が聞こえなくなった独房は、いつもの静けさを取り戻した。そして刑は粛々と執行されたのだった。



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