捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 まさかあの人たちがここまでするなんて思わなかった。ただ近況を知らせるための手紙を送っただけで、ありもしない嫌疑をかけて牢屋に入れるなんて信じられない。

「どうして……私に関わる者も許せないということなの……?」

 もしそうだとしたら。
 私が存在しているだけで家族に迷惑がかかるというなら、その時はどうすればいいのだろう?
 私が消えてしまえばいいのだろうか?
 そうしたら、誰にも迷惑がかからない?

 鼻の奥がツンとして、熱い雫が込みあげる。折れそうな心を奮い立たせて揺れる視界を飲み込んだ。
 アレスがいたらきっとすぐに抱きしめて「お嬢様、心配いりません」と慰めてくれただろう。でも今は私が頼んだ素材を必死に集めてくれている。あと数日で戻るかも知れないし、一週間以上かかるかも知れない。
 それまでいわれのない罪で捕らえられている両親や、心細い思いをしているセシリオを放っておけない。

「セシリオ……実家に戻らないと……!」

 私は心配をかけないように、戻ってくるであろうアレスとお世話をしてくれている方に宛てて書き置きを残した。そしてできるだけの魔道具を持って、転移の魔道具を発動させる。

 もしかしたら、ここにはもう戻って来られないかも知れないという不安は振り払って、魔道具の光に身を委ねた。



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