捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「ボクに抱かれているうちに、他のことなどすべて忘れてしまうさ。なあ、ロザリア?」

 ウィルバート殿下がベッドに広がった髪を掬い上げてキスをする。こぼれる涙はそのままにきつい視線で睨みつけた。ひとりで着られる簡易的なドレスはつまり脱がしやすいということだ。侍女を置かれなかったので、長いシフォンドレスの上からコルセットを巻いて紐で締めているだけだ。

 ニヤリと気味悪く笑うウィルバート殿下はいとも簡単にコルセットの紐を解いていく。私の身体を撫であげるウィルバート殿下の手に鳥肌が立った。

「クククッ、ほら我慢せずにボクを感じればいいんだ」

 アレス、愛してる。アレス、あなたに会いたい。アレス————

 その時、大地を揺るがすような轟音が鳴り響き、ウィルバート殿下が私の上から吹き飛んでいった。城が大きく破壊されたことで私を縛り付けていたネックレスもパリンと音を立てて砕け散る。
 視界に飛び込んできたのは突き抜けるような青空だった。
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