捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
29話 愛しい人のもとへ(アレス視点)
「アレス!! 正気に戻れ!!」
「っ! 父……上?」
俺は今なにをしようとしていた?
危なかった。激情にのまれて、取り返しのつかないことをするところだった。
「はあ、よかった。落ち着け、大丈夫だ。ロザリアちゃんはこの国の王城にいるとわかった」
「ごめん……暴走するところだった」
すでにスレイド伯爵の屋敷からは遠く離れ、王都の外れにある塔の最上階にいた。誰も近寄らない古びた塔は身を隠すのにもってこいだ。
「あー、仕方ねえよ。番を攫われたんじゃなぁ。まあ、兄上を止められるのは父上だけだけど」
「アレス、ここにはロザリアの家族もいるのだから何とか堪えるのよ」
「わたし情報集めてきたんです! こっちに集中しましょう!」
周りを見れば父上だけじゃなく、カイルも母上もジュリアも来てくれていた。政務は大丈夫かと思ったけど、暴走した竜人を止められるのなんてそうそういないから他に適任者がいない。申し訳ないが事務官たちは優秀だし頑張ってもらおう。
今回のことが落ち着いたら何かお礼をしようと心に決めた。