捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 何をグダグダとしているんだ? 俺のロザリアにかすり傷でもついたらどうしてくれるんだ。あんなゴミ虫どもはこの世から排除したとこでプラスにしかならないだろう。

「そうすればほんの五分程度で救出できるな」
「アレス!? 正気に戻ったんじゃなかったの!?」
「いや、いたって正気だ。まだアイツらをミンチにしてないからな」
「あああ! アレスッ! 落ち着いて!! ミンチにしたらロザリアちゃんが悲しむよ!?」
「…………そうだな、じゃぁ、死なない程度の八つ裂きで我慢する」

 父上が何やら煩く言ってくるが、確かにロザリアなら殺生は好まないか。穏やかで優しくて慈悲あふれるからな。ロザリアの悲しむ顔は見たくないから仕方ない。

「いや! そうじゃなくて!! サラ、これヤバい! もうアレスが壊れてる! 僕ひとりじゃ荷が重いよ!」
「あら、貴方ならできるわ。私の竜王様ですもの」
「え、そう? そう、かな? サラが言うなら間違いない……?」
「そうよ、貴方にしかできないわ。ソル」
「こういうときに名前で呼ぶのズルい」

 父上がいつものように母上に転がされている。ああ、俺もいつかロザリアに上手く転がされるのか。それもまた楽しみだ。『アレス、お願いできるかしら?』なんて言われた日には、どんな無理難題もこなしてしまう自信がある。
 いや違うな、もうすでに転がされてるか。黒水晶の件がいい例だ。

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