捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「これが夫の操縦方法……!」
「ちょ、ジュリア、母上は参考にするなよ?」

 まあ、このふたりはすでにカイルが尻に敷かれているから大丈夫だろう。竜人は伴侶に操縦されるのが常だ。これだけ深く愛している番に逆らえるわけなんてないのだから。

「とにかくアレス! ロザリアちゃんが大切なら、僕のように暴走してはダメだ!」
「わかった。お嬢様が悲しまないようにする」

 そうしてストッパー役の父上と王太子妃の部屋の監視を始めた。少し距離はあるが王立学院の時計塔の最上階からだとよく見えた。
 どうやら王太子はロザリアにご執心の様子で、すぐに危害が加えられることはなさそうだった。

 煮えたぎるような嫉妬はなんとか抑えこんで、状況が整うのをひたすら待った。だからあのクソ王子に暴言を吐くくらいは許されると思う。

「はっ、あんなことでお嬢様を落とせると思ってるのか。浅はかだな」
「えー、甲斐甲斐しく世話してるように見えるけど?」

 確かに世話はしているが、あれでは自分の好きなものを押し付けているだけだ。ロザリアの顔色なんてまったく見ていない。どんどん笑わなくなっているのがわからない時点でアウトだ。

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