捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「ロザリア様。私は貴女の憂いをすべて取り払いたい。貴女でないとダメなんです。貴女だけが欲しい。貴女が微笑ってくれるなら、この世界だって手に入れます」
そう言って差し出された手はトレードマークだった白手袋をつけていない。
戸惑う私の手をすくい上げて、指先に艶めく唇を落とした。そのまま腕の中に囚われてしまえば、私の瞳に映るのはあなただけ。
離れなければいけないと頭では理解しているのに、歓喜に震える私の身体はピクリとも動かない。
このまま、私の心のまま選んでもいいの?
それでもあなたは後悔しないの?
私の揺れ動く心を見透かしたように、彼は追い打ちをかける。
「俺はロザリア以外なにもいらない」
それは執事としてではなく、アレス自身の言葉。
「同じ気持ちなら、俺にキスして」
ずっと私を想ってくれていた。
ずっと私に気持ちを伝えてくれた。
本当は自分の気持ちなんてとっくにわかってた。
もうこの夜空の瞳から逃げられない。
違う、もう逃げたくない。
まだ間に合う?
一度は諦めようとしたけど、私はアレスを望んでもいい?
「私…………私は————!」