捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「まっ……アレ……んふっ」

 もう力が入らなくなりそうで止めてほしいのに話す隙もない。強めに拳を打ち付けて、やっと止まってくれた。

「ごめん、やっと俺のものになったから嬉しすぎて止められなかった」
「もう……力が、入らなくなっちゃう……」
「いいよ、あとは全部俺に任せて。もう一瞬たりともロザリアと離れたくない」
「あっ、待って、アレス……んんっ!」


「おっ、おっ、お前ら!! 何をしているのだ!?」

 その叫び声にハッと我に返る。
 深く繋がっていた唇が離れて声の主に視線を向けると、ボロボロになったウィルバート殿下が立っていた。怒りに染まって醜く歪んだ顔は、キラキラと輝いていた頃の面影もない。

「何って、番と熱い口づけを交わしているんだ。邪魔するな」
「つがい……? 何を言っている、その女は私の妻になるんだ! その手を離せぇぇっ!!」
「……誰が誰の妻になるだと?」

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