捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 ゆらりと揺れるように立ち昇る魔力は以前のアレスとは別物のように強大で、それだけで平伏したくなるような覇気をまとっていた。ウィルバート殿下はハクハクと口を動かすだけで後ずさる。

「アレス、待って! お父様とお母様が投獄されているの。先に助け出さないと危険だわ」
「ああ、それなら母上たちが対処してる。父上も合流したから問題ない。ロザリアを縛りつけるものは何もない」

 その言葉に今度こそ力が抜けた。お父様とお母様が助かるなら、私がここでウィルバート殿下の言いなりになる理由はない。

「よかった……! それだけが心配で、お父様とお母様に何かあったらって……!」
「あと数分で伯爵夫妻は救出できる。安心して」
「お前ら、ボクを無視するな! この国の王太子だぞ!! クソッ、邪魔な奴から片付けてやる!」

 そう言ってウィルバート殿下は至近距離で全力の火炎魔法を放ってきた。アレスの張った結界によって魔法は防がれて私には熱さも届いていない。
 反射的につぶってしまった目を開ければ、アレスは私を抱きしめたまま片手で魔法を握りつぶした。

 えええ! 魔法を素手で握りつぶすなんて、いくらなんでも強くなりすぎだわっ!
 このままアレスだけで片をつけるつもりかしら!?

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