捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 謁見室に放たれた言葉は口調は穏やかなのに、罪人を裁くときの非情で冷酷なものだった。いつもの竜王様とはまったく違う空気をまとっている。笑みを浮かべつつもその瞳はすべてを見透かすかし、凍てつくような冷気を孕んでいた。

「我はラクテウス王国の竜王である。此度は王太子となったアレスの番、ロザリア・スレイド嬢を卑怯な方法で攫ったことにより我が国に敵意ありとみなした。よってここに宣戦布告する」

 この言葉でサライア様をはじめカイル様もジュリア様もアレスまでも国王たちに強烈な殺気を放った。アレスだけはレベルが違うので、少し抑えてあげてほしい。何気に王太子にグレードアップしていたのは、この際目をつぶる。
 それに本当にここにいる五人だけで、この国など一時間もあれば落してしまうだろう。案の定青を通り越して白くなった顔色の国王陛下が慌てて弁解をはじめた。

「お、お待ちくださいませっ! そのロザリアがアレス殿下の番であるなどとはつゆ知らず、スレイド伯爵も無実であったと調べがついております! 決して、決して我がアステル王国はラクテウス王国に敵意など向けておりません!!」
「ほう。ではロザリア嬢を攫ったのはわざとではないから無実だと申すのか?」
「はいっ! 決してラクテウス王国に害をなそうなど考えてもおりません!!」

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