捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 そうなんだ。互いに幸せを願わなければ明るい未来などやってこない。一方通行の愛なんて枯れるだけなのだ。
 夜空の瞳はいつでも私を優しく見つめて、大きな手のひらは迷いなく私の手を引いてくれる。だから私も目一杯の愛情を込めて名前を呼ぶ。あなただけが特別なのだと、私が欲しいのはあなただけなのだと、告げるように。

「アレス、もう二度と手離さないから覚悟してね」
「望むところです」

 そっと重ね合わせた手のひらは、もっと近寄りたいと指を絡める。
 その様子を見ていたお父様が咳払いして、ギロリとアレスを睨みつけた。アレスはまったく気にした様子もなく、指を絡めたままだ。お母様に「諦めて」と諭されたお父様がシュンと肩を落とした。

「ところでロザリア、あなたどうして瞳の色が変わったの?」
「え? 瞳の色?」
「ええ、ほら深緑の中に金色の粒がキラキラしてるの」

 お母様の何げない問いかけに何のことかと首を傾げた。
 部屋に控えていたメイドが気を利かせて手鏡を貸してくれて自分の瞳を覗き込んでみれば、確かに地味な深緑の虹彩に金色の模様が浮かび上がっていた。まるで、アレスの……竜人の瞳のように。

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