捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「ええ! ど、どうして?」
「ああ、お嬢様が私と番の契りを交わしたからです。だから身体が変化したのです」
「え? 契りって何? いつ交わしたの!?」
「それは……ここで言ってもいいのですか?」
「ははっ、アレスは恥ずかしがり屋だね。よし、僕が説明しよう! 竜人とその番が体液の交換をすると、人間である番の身体が変化して、僕たちと同じ竜人となるんだ。だから瞳も変わるんだよ。変わると言っても竜人のように長寿になって、病気に強くなるくらいかな。数時間程度のタイムラグはあるけどね」

 竜王様の発言を噛み砕いて飲み込んでみた。
 体液の交換とは? 体液とは体に含まれる、または体から分泌される液体のことだ。血液、汗、涙、唾液。
 ……………………唾液。
 そうね、確かに数時間前に交換したわ。つまりは私とアレスが口づけしたと竜人の方々にはバレていたというの!?
 あああ! 知ってるわ! これこそ知らぬが仏というのよ……!!

「ロザリアちゃん、どうしたの? 石像みたいになっちゃって」
「父上っ!」
「ソル……黙って」
「え? なんで? 別に恥ずかしいことじゃないでしょ」
「————————アレス、つまりは体液を交換するようなことを婚姻前にしたというのか?」

 地獄の底から聞こえてくるような低い声でお父様が静かにブチ切れた。

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