捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 ちょっとしたことでブレてしまう頼りない僕を、いつでもさりげなく立ち直らせてくれる。そんな妻を誰よりも深く深く愛している。この愛の深さは息子たち夫婦に負けていないと言い切れる。

「それにしてもアレスはもう少しだけ我慢ができなかったのかしら?」
「いやー、あれでも我慢した方なんじゃない? なにしろ他の男のものである番を九年間も側で支え続けたんだから、今日はもう仕方ないと思うよ」
「……そうね、今日と蜜月くらいは大目に見てあげましょうか」

 それは竜人としてあり得ないほどの苦痛だ。
 身の内から暴れ出しそうになる狂気じみた烈情を抑え込むのが、どれほど辛いのか番のいる竜人なら誰もがわかる。それを暴走もせずに九年間も耐え忍んだのだ。

「そりゃ覚醒もするわけだ」

 恐らく覚醒したアレスに敵う者などいないだろう。今なら帝国といえどもアレスひとりで制圧してしまいそうだ。そしてそれを制止できるのは、もうロザリア(つがい)しかいない。

「ねえ、ある意味さ、ロザリアちゃんが世界最強じゃない?」
「……そうね、これは今まで以上に国をあげて大切にしないとダメね」
「はあああ、ロザリアちゃんがいい子で本当によかったー」

 そう言ってサラと声を上げて笑う。あちこちで弾ける笑顔に、僕はこの国の明るい未来を見た気がした。
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