捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「ロザリア、どこへ行くつもりだ?」

 聞いたことがないような低いアレスの声がした。振り返ってみれば、アレスがさまざまな料理が載ったトレーをサイボードに置くところだ。食事を受け取るために着替えたのか、濃紺のトラウザーズにゆったりめの白いシャツを身にまとっている。

「あ、あの着替えを取りに行こうかと……」
「着替え? 必要ないだろ?」
「え? どうして?」
「着てもすぐ脱がすから意味ない」

 ……………いや、待って待って待って。私、結構頑張ったと思うのよ。アレスをずっと待たせてきたし、愛してもらえるのが嬉しかったし、ちょっとくらい身体がダルくても動かなくても応えてきたのよ。

「待って、あのね、愛しあうのは嬉しいし幸せだし、嫌じゃないの。でもね、他のこともしたいの!」
「他の……」
「そうよ! 一緒に散歩したり、一緒にデートしたり、一緒に素材集めたりもしたいの!」
「なるほど、散歩もデートも素材集めも一緒にしよう」
「本当!?」
「ああ、蜜月が終わったら」

 …………全然伝わってない。そうじゃなくて、そろそろこんな爛れた生活から抜け出したいのに。でも朝食の美味しそうな匂いにお腹が鳴りそうだわ。

「とりあえず食事をいただきながらお話ししましょう」



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