捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「ロザリア……ありがとう。愛してる」

 優しく甘く熱い口づけが降ってくる。唇から頬へ、まぶたへ、耳へ、そして首筋に赤い花びらを散らしながら、私の着ていたシャツに手をかける。

「待って、アレス」
「待たない。蜜月のあいだは俺だけのロザリアでいてくれるんだろ?」
「そうだけど……せめて着替えを……」
「無理。もう我慢できない」

 待って。このセリフ、どこかで聞いたわね?

「さっきからずっと我慢してたけど、この格好ヤバい。めちゃくちゃ(そそ)られる」

 そこ!? そこだったの!?
 それは……盲点だったわ! そうとわかっていれば、この選択はなかったのに!!
 そうね、これこそまさしく後悔先に立たずだわ……!

 もう、さっきまでのしおらしいアレスはどこにも見当たらない。私をベッドに押し倒し、獲物を狩るような視線で見下ろしている。どんなに逃げようとしても、アレスのキスひとつで腑抜けてしまうのだからどうにもならない。
 そしてまた私はアレスの底の見えない深い愛に溺れていった。



「もう絶対に離さない。俺だけのロザリア」

 アレスが呟いた言葉は私の耳には届かなかった。



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