捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「お嬢様、もう一度データを見比べてみてはいかがですか? 何か新しい発見があるかもしれません」
「そうね、そうしてからまた考えるわ。アレス、一休みするからお茶を頼める?」
「承知いたしました」

 アレスは魔法を器用に使ってあっという間にお湯を沸かす。
 その繊細な魔力の操作が見事で、いつも見惚れてしまう。夜空の瞳が私に熱のこもった視線を向けているのに気づいたときには、もうアレスに触れたいという欲望が頭をもたげていた。

「どうしました? そんなに潤んだ瞳で見つめられると困ってしまいますね」
「あっ、違うの。あの、アレスが魔法を使うところを見ているのが好きなの」
「へえ……見ているだけで満足ですか?」

 ああ、もうアレスの笑顔がいつもの執事の笑顔じゃない。あれは、獲物を狙うときのものだ。

「お嬢様、素直におっしゃってください」
「素直に話しているわ……」

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