捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「アレス、このままではいけないと思うの」
「何がですか?」
「私はアレスに求められたら断れない自信があるわ。だから政務やお店の営業時間中は、そういうことは禁止よ!」

 翌々日の朝イチで、アレスに宣言した。
 この前みたいになってしまったら、少なくとも私は翌日まで影響が出てしまう。愛されすぎて朝に起きれなくなるのだ。政務を円滑に進めるために、ここはきちんと線引きしないといけない。

「そういうこととは、どういうことですか?」
「えっ! わかるでしょう!?」
「すみません、心当たりがありすぎてどのようなことがダメなのか検討がつきません」
「ええっ! 嘘でしょう!? 私が口で説明しなくてもアレスならわかるわよね!?」
「……申し訳ございません、絞りきれません」

 何ということなの! 今まで散々その有能っぷりを発揮してきて、ここでわからないなんて! ありえないわ!
 これは私がひとつずつ教えていかないといけないのかしら……そんな、何ていう拷問なの!!
 はっ、そうだわ。それならいっそのこと接触禁止にすればいいのでは……!

「わかったわ、それでは仕事中は接触禁止よ。これなら間違いないわ、いいかしら?」
「……承知しました」

 その日からアレスは以前のようにトレードマークの白手袋をつけはじめた。
 今まではふとしたときに触れ合う指先で、アレスの熱を感じられたのに今はその白い布に阻まれて温度を感じない。自分から言い出したこととはいえ、何だかとても寂しく感じてしまう。



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