捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 それから三日後、私は全面降伏した。

「ごめんなさい、アレス。やっぱり今まで通りでいいからその白手袋を外してほしいの」
「……わがままなお嬢様ですね」
「ごめんなさい」
「でもそんな貴女が愛しくてたまらないのです」

 いつもの大きくて温かい手のひらが私の頬を包みこむ。アレスの瞳には私しか映っていない。
 この温もりだ。これが欲しかったのだ。私もアレスに負けないくらい、貪欲に欲していたのだと認めるしかない。
 だからもう主従関係もなくしたいと、ない方がいいのではと思った。

「ねえ、いつまで執事を続けるの?」
「何言ってるんですか、辞めませんよ。天職、いえ、生き甲斐ですから」
「え、だってアレスは王太子なのよ? さすがに無理がないかしら?」
「誰がなんと言おうと、一生お嬢様だけの専属執事です」

 アレスの柔らかい唇が額に頬に落ちて、ジワジワと蝕むように熱が広がる。深いキスをする頃にはすっかりとろけた気持ちになっていた。予定していた作業は翌日に持ち越しだ。
 それでも本当に余裕がないときは、私がどんなに物欲しそうにしても決して触れてこないのだから、アレスには本当に敵わない。

 わかってる、これはもう惚れたら負けというヤツだ。
 だってもうアレスが欲しくてたまらない。アレスしか欲しいと思わない。
 だから私はこの手を、この愛をもう手離さない————


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