捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
お父様の言いたいこともわかる。いくら貴族の令嬢らしくなかったとはいえ、市井で生活はまったくの別物だ。
「ふふ。お父様、それならすでにアレスに押し切られてます。優秀な執事を連れて行って申し訳ありませんが、一緒に来てもらうことになってますので安心してください」
「そうか……アレス、本当に任せていいのだな?」
「当然です。お嬢様には全身全霊でお仕えいたします。旦那様の許可もいただけましたので、もう遠慮はしません」
「わかった。それでいい」
本当にお父様は心配性なのね。大袈裟なんだから……でも、それがいまは嬉しい。この家に帰ってきて、忘れかけていた家族の温もりを思い出せた。
「それでは、そろそろ出立します。これ以上の長居は危険ですから」
私は静かにソファーから立ち上がった。アレスに手を差し出せば、そっと宝物を扱うように受け止めてくれる。
「落ち着いたら手紙を書きます。みんなお元気で」
アレスの転移魔法が発動される。白い光に包まれて、周囲の景色が霞んでいった。
お父様、わかってくれてありがとう。
お母様、一番に抱きしめてくれてありがとう。
セシリオ、私のために怒ってくれてありがとう。
こんな私を変わらずに愛してくれてありがとう。
みんな、どうか幸せになって。
そう祈りながら離縁されたその日のうちに、アステル王国から姿を消した。
「ふふ。お父様、それならすでにアレスに押し切られてます。優秀な執事を連れて行って申し訳ありませんが、一緒に来てもらうことになってますので安心してください」
「そうか……アレス、本当に任せていいのだな?」
「当然です。お嬢様には全身全霊でお仕えいたします。旦那様の許可もいただけましたので、もう遠慮はしません」
「わかった。それでいい」
本当にお父様は心配性なのね。大袈裟なんだから……でも、それがいまは嬉しい。この家に帰ってきて、忘れかけていた家族の温もりを思い出せた。
「それでは、そろそろ出立します。これ以上の長居は危険ですから」
私は静かにソファーから立ち上がった。アレスに手を差し出せば、そっと宝物を扱うように受け止めてくれる。
「落ち着いたら手紙を書きます。みんなお元気で」
アレスの転移魔法が発動される。白い光に包まれて、周囲の景色が霞んでいった。
お父様、わかってくれてありがとう。
お母様、一番に抱きしめてくれてありがとう。
セシリオ、私のために怒ってくれてありがとう。
こんな私を変わらずに愛してくれてありがとう。
みんな、どうか幸せになって。
そう祈りながら離縁されたその日のうちに、アステル王国から姿を消した。