捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました

9話 新天地へ

     * * *



 ラクテウス王国には竜人と呼ばれる希少種が住んでいる。街の規模は想像していたよりも大きくて、控えめにいってもアステル王国の王都よりも栄えていた。
 断崖絶壁の山の上にある街だから立地的には秘境で間違いない。

「お嬢様は竜人の話を聞いたことはありますか?」
「妃教育で学んだけど詳しくは知らないの」

 王太子妃として当然のように他国のことも勉強したけれど、竜人については(つがい)と呼ばれる伴侶がいて、人知を越える存在だということしか知らなかった。

「私たちは遥か太古の昔に竜の血を取り入れた種族で、恵まれた身体能力と膨大な魔力を保有しているのが特徴です」
「なるほどアレスが優秀な理由がわかったわ」

 私は竜人についての話を聞きながら、アレスの後についてラクテウスの街の中を歩いていく。

「一般的には知られてませんが、竜人かどうかは瞳を見ればわかります。瞳の虹彩部分に金色の光があるのが竜人である証です」
「ああ、だからアレスの瞳は夜空みたいにキラキラしていたのね」
「これは元々竜の瞳が黄金色で、その名残だと聞いてます」
「そうだったの、金色の瞳はとても美しいのでしょうね」

 私みたいに地味な瞳からすれば羨ましい話だ。こんな綺麗な瞳だったら、人生も違っていたかもしれない。ツキンと心の奥で痛みを感じたけど気づかないフリをした。

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