捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 やっと離れてくれたけど変な汗をかいてしまった。いい年だけどこういう距離感はいまだに免疫がないのだ。
 ここ数年はこんなに近づくことがなかったのに……言葉遣いも少し砕けているし故郷に戻ってきたからアレスも開放的になっているのかしら?

「竜人には番という唯一無二の伴侶いるのはご存知だと思いますが、もし番に手を出されたと思ったら全力で叩き潰されます」
「えっ、全力で!? そうなの!?」
「はい、それはもう容赦ありません」
「……早めに聞けてよかったわ」

 先程の話からすると、もし勘違いでもされようものなら私など瞬殺されてしまう。そんなことで人生を終わらせたくはない。
 それを忠告しようとしていただけなのに狼狽えてしまって、なんて恥ずかしいことか。

「ええ、ですから竜人の男に……というか異性にむやみやたらに近づいてはいけません」
「気をつけるわ。あ……でもアレスは大丈夫なの? その番の方は怒らないの?」
「私は問題ありません」

 安心させるようにいつもより優しく微笑むアレスを見て、問題はなさそうでホッとした。アレスの番になる方は理解があるらしい。

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