捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました


「私の愛しい番。愛してます。ずっとずっと、ひと目見た時から狂おしいほど貴女が欲しかった」


 アレスの言葉が荒れ果てた心に優しい雨となって染み込んでいく。
 ずっと欲しかった言葉。
 どんなに望んでも与えられなかった愛情。
 こんなに惜しげもなく、まだ足りないと言わんばかりに全身で伝えてくれる。


「私の妻になってください」


 プロポーズの言葉と共に差し出された手には、いつもの白手をつけていない。

「私の手を取ってくださいますか?」

 幾度となく差し伸べられた手を取ったことはなかった。その時は私が負うべき責務があったから断るしかなかった。
 でも、今なら。今なら応えても誰も傷つかない。
 そう、傷つかないはずだ。

 アレスの問いかけに応えようとして、ハタと考えた。

 私はアレスに気持ちがあるの?
 こんなにも真っ直ぐな想いを向けてくれるアレスに、心から愛してると言えるの?

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