捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 セインと入れ替わり、魔道具袋の中から回復魔法が込められた指輪を取り出して使用した。淡いグリーンの光に包まれて、細かい傷はみるみる治っていく。他に大きな怪我はないようだったので、抱き上げてひとまず声をかけた。

「ねえ、大丈夫? 回復魔法をかけたけど他に痛むところはない?」
「……ぅ……ぁ……」

 反応がある、よかったわ! 意識が戻ってきたみたい。はああ、本当に死んでなくてよかった!!

 少年がゆっくりと瞳を開く。

 その瞳は深い青に金色の光の粒が散りばめられていて、まるで満天の星空のように繊細で美しい。私は惹き込まれるように見入ってしまう。

 一瞬で心を奪われた。
 その瞳をずっと見ていたいと思った。

 でも少年は私を見て一瞬大きく目を見開いたあと、再び気を失ってしまった。閉じてしまった瞳にガッカリしたところでハッと我にかえる。

「あっ……気を失ってしまったわ……セイン、この少年を屋敷に連れ帰ります。まだ使えそうな魔道具があるから、屋敷に着くまで片っ端から試すわ」
「承知しました」
「タイラー、心配ないから屋敷まで急ぎでお願いね」
「はっ、はいっ! 最速で戻りますっ!!」

 屋敷に着くなり医者を手配して必要な処置をお願いする。命に別状はないようだと聞いてホッと胸をなでおろした。



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