捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「ではこうしましょう。私は専属執事を続けながらお嬢様を口説きます。もし私と結婚してもいいと思えたら、返事はキスでお願いします」

 キス? いわゆる男女が唇と唇を寄せ合って、場合によっては体液の交換まで行うアレのこと!? それを返事代わりにしろというの!?

「待って、どうしてキスなの!?」
「言葉ではなんとでも言えます。そこは互いに行動で示せばお嬢様も納得されますよね? お嬢様を愛しているからこそ、無理強いをしたくありません。それに私も尋常ならざる忍耐を強いられますから、ご褒美が必要です」
「ううっ……そう言われると反論できないわ」

 そもそもアレスを愛してるならキスをするのに抵抗なんてないはずだ。愛してなければプロポーズだってお断りするんだから、提案として間違っているわけではない……と思う。

「では異論ございませんね?」
「………………はい」

 私の葛藤が追いついたタイミングでアレスが声をかけてきた。この絶妙なタイミングが憎らしい。
 嬉しそうに微笑むアレスにほんわかしたのは内緒にしておいた。



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