捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 そんな風に考えた瞬間、休んで回復した魔力があふれ出して部屋の中を駆けめぐる。窓ガラスや周りの家具は魔力の圧力で破壊され、部屋の中は嵐が過ぎ去ったあとのようだった。

「きゃぁぁぁ!!」

 怯え切った悲鳴に我を取り戻して、すぐにメイドの姿を確認する。

「申し訳ありません! 世話をしてもらったのに怖い思いをさせてしまって……怪我はありませんか?」

 幸い世話をしてくれたメイドは無事だったが、騒ぎを聞いたロザリアに私室へと呼び出された。
 メイドには申し訳ないことをしたが、俺にとってはロザリアと話せる願ってもないチャンスだった。



「それで、どうしてあのような状況になったのか聞かせてもらえる?」

 ロザリアの声はそよ風のように優しく俺の耳に届く。うっとりとしそうになるのを何とか気を引き締めて、少しでも好感を持ってもらえるように話をはじめた。

 俺はロザリアの気持ちを確認したかった。
 貴族の婚約なら政略的な場合もある。もしお互いに気持ちがないなら俺が入り込む隙だってあると思っていたし、ロザリアが嫌がっているなら攫っていく覚悟だってしていた。

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