捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
12話 もう泣かないで(アレス視点)
俺はロザリア様とともにいばらの道を進むと決めた。
今でも身を焼くような狂愛が内側で暴れている。
でも俺の幸せはロザリア様の幸せだ。俺が連れ去ることでロザリア様が泣くなら、この程度の苦しみなどいくらでも耐えられる。
だからどうか、貴女がせめて心穏やかに過ごせますように。
願わくば皆に愛される妃になりますように。
そう祈っていた。それなのに。
王太子は学園で出会ったしがない男爵家の令嬢に入れ揚げて、ロザリア様を疎かにした。
俺が堪えていたのはひとえにロザリア様のためだ。健気に耐えて、そのうえ望まれるまま己のすべてを差し出して妃教育と政務をこなしていた。
俺にできるのは妃教育の帰り道で話を聞いて、慰めるくらいだ。
「お嬢様、そんなに落ち込まないでください。最初からできる人間などいないのです。お嬢様は努力家ですからすぐにできるようになりますよ」
「そうかしら……でも自信ないわ。三か国語を話せるようになるのでやっとだったのに、あと二カ国語が追加になったのよ?」
これは王太子が勉強をサボり遊び歩いているせいで、ロザリア様にしわ寄せが来ているからだ。あのクソ王子など始末できたら楽なんだが。
「では、これから帰りの馬車では私と外国語でお話ししましょう。追加になったのはノイエール語とカルディア語ですね?」
「え、アレスは話せるの?」
「はい。旅をしている時に滞在していたことがありますので、日常会話でしたら問題ありません」
「本当!? よかった、アレスが教えてくれるならすぐ覚えられそう!」
久しぶりにロザリア様は花が咲くような笑顔を浮かべた。
ああ、そうだ。この笑顔が見たくて共に歩むと決めたのだ。俺が役に立てるなら、いくらでも力を貸そう。
愛しいロザリア様。貴女の笑顔をもっと見せてください。