捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
その日は国中がお祭り騒ぎだった。
前日から祭りで賑わう街はおめでたいと誰も彼も浮かれている。
「めでたいことなど、ひとつもない……」
ポツリと呟いた声は侍従用の控室で誰の耳にも届くことなく、慌ただしさにかき消される。
曇天に覆われた空はロザリア様の心模様を映したかのようだ。王太子との結婚式は国を挙げてのイベントだ。貼り付けた笑顔に誰もが誤魔化されていた。
やっぱり俺は選択を間違ったのか?
今なら、間に合うだろうか。まだ引き返せるだろうか?
はやる気持ちをおさえて、ロザリア様の控室へと向かう。
先程ひとりにして欲しいと言われ、部屋を後にしてきたばかりだ。他の男のために着飾った花嫁姿に、かつてない苛立ちを感じていたからあっさりと引き下がった。
でも、まだ間に合うなら。
「お嬢様。お話があります」
「……アレス? 入って。どうしたの?」
どうして、誰も気がつかないんだ。こんなに無理して笑顔を貼り付けているのに、どうしてロザリア様が喜んでるなんて勘違いできるんだ?
前日から祭りで賑わう街はおめでたいと誰も彼も浮かれている。
「めでたいことなど、ひとつもない……」
ポツリと呟いた声は侍従用の控室で誰の耳にも届くことなく、慌ただしさにかき消される。
曇天に覆われた空はロザリア様の心模様を映したかのようだ。王太子との結婚式は国を挙げてのイベントだ。貼り付けた笑顔に誰もが誤魔化されていた。
やっぱり俺は選択を間違ったのか?
今なら、間に合うだろうか。まだ引き返せるだろうか?
はやる気持ちをおさえて、ロザリア様の控室へと向かう。
先程ひとりにして欲しいと言われ、部屋を後にしてきたばかりだ。他の男のために着飾った花嫁姿に、かつてない苛立ちを感じていたからあっさりと引き下がった。
でも、まだ間に合うなら。
「お嬢様。お話があります」
「……アレス? 入って。どうしたの?」
どうして、誰も気がつかないんだ。こんなに無理して笑顔を貼り付けているのに、どうしてロザリア様が喜んでるなんて勘違いできるんだ?