捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 ロザリア様が式を終えた日の夜は、眠れなかった。
 ただ部屋の中で膝を抱えて、行き場のない激情を魔力が暴走しないように抑えるので精一杯だった。ロザリア様の傍にいるために、何がなんでも耐えなければいけない。

 考えるな。何も考えるな。
 ただロザリア様が微笑(わら)ってくれればそれでいいんだ。幸せそうにしてくれれば、それだけでいいんだ。

 やがて空が白み、俺の部屋にも朝日が差し込んでくる。長い長い夜が終わった。
 いつか慣れるだろうか。いや、ロザリア様の傍にいるためには慣れなければいけない。

 他の女でも抱けば気がまぎれるか?
 いや、無理だな。チリほども興味が湧かない。そもそも反応すらしないだろうな。

 そんなことを考えながら、いつもより遅い時刻にロザリア様の私室に向かった。本来なら王太子妃として、王太子の隣に部屋が用意されるはずなのに遠く離れたこの部屋を使えと言われた。それだけでも業腹だった。

 王太子にあったら八つ裂きにしてしまいそうだったので、時間をずらしたのはきっと誰も気づいてないはずだ。

 だが、ロザリア様から衝撃の事実を聞いてしまった。
 俺のロザリア様はなんと乙女のままだった。夢じゃないだろうか?

 あのクソ王子はこんなにも魅力的なロザリア様を前に、さっさと愛妾の部屋に戻ってしまっただって? ポンコツを通り越してバカなのか? ああ、バカだから目の前のお宝に気がついていないんだな。いや、それはそれでありがたい。

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