捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 被害が出た部屋を見てみると壁から天井までズタズタになっていて、誰も怪我をしていないのが奇跡的な状況だった。
 部屋に戻ってメイドに着替えを手伝ってもらい、一息ついたタイミングでブレスがあの少年と一緒にやってきた。少年は緊張した面持ちで部屋に入ってくる。

「元気になってよかったわ。それで、どうしてあのような状況になったのか聞かせてもらえる?」

 少年はその問いかけに答えようと、私が腰を下ろすソファーの前までやってきて膝をついた。ここまでの動作が流れるように美しくて思わず見惚れてしまう。

「助けていただいたのに、恩を仇で返すような真似をして本当に申し訳ありません。少し感情が昂ってしまって抑えることができませんでした」
「そうだったのね……もしかして使用人が何か無礼な対応をしたのかしら?」
「いえ、違います。とても良くしていただきました。これは俺の問題です。弁償するにもお恥ずかしいのですが手持ちがなく、よろしければこちらで働いてお返しできませんか?」

 予想外の返答に困惑してしまう。身のこなしや受け答えからある程度の教育を受けているのは間違いない。
 弁償の話も出てきたことから、どこかの貴族か商家のご子息なのかもしれない。それなのにここで働きたいという。

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