捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 私の怒号を受けたファンクは、もはや口をハクハクと動かすだけだった。ダメだ、此奴では魔道具開発を任せられない。

「あの……すみません。一応設計書を売った時の契約書を持ってきているので、問題なければ下がらせていただけませんか?」

 ファンクの連れてきた商人がおずおずと申し出る。私の怒りを目の当たりにしていたたまれないのだろう。確かに非がないのであれば、ここにいるだけ時間の無駄だ。

 宰相へ視線を向けて促すと、販売時に取り交わしたという書類に目を通していく。
 一通り読み終えてサインも偽造でないかチェックした後、私に耳打ちしてきた。

「陛下、これはあくまで設計書を売るだけのもので効能を保障するものではありません。これであれば内容を精査して使用するかどうかは購入者の責任となるでしょう」
「わかった。それであればそこの商人は下がってよい」
「ありがとうございます。失礼します」

 そう言って商人はホッとした様子で、そそくさと退室していった。

「ファンク、お前は魔道具研究の指揮から外す。爵位も一代限りの男爵に降格とする。以上だ、下がれ」

 我が息子の推薦だと思い、重用したがとんだ厄災となってしまった。後任には先日話を聞いたエンリケスを置き、繰り上げ人事でなんとか対応する。
 しかしすでに優秀な研究者は国から出奔しており、アステル王国の魔道具開発はその推進力を失った。

 これにより国王と王妃も貴族や国民から非難を浴びるが、頭の痛い問題はこれだけではなかった。
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