捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
15話 専属執事のジェラシー
「……暇ね」
「そうですか? 私はお嬢様を眺めているので忙しいですが」
「……他にやることないの?」
「今はお嬢様を堪能する時間でございます」
「…………」
開店から二週間お客様は誰ひとりとしてやって来なかった。その間に展示用の魔道具は二十種類を超えるほど用意できてしまった。
まずいわ……このままでは潰れてしまうわ。今まで作る方ばかりで商売としてはあまりタッチしてこなかったから、実際にどうしたらいいのかわからないわ!
伯爵家のときはお父様が、王太子妃の時は専門知識のある文官に任せていたのだ。書類でこなす仕事と実際の店舗運営では勝手が違いすぎた。
「どうしましょう……このままでは食事がパンとスープだけになってしまうわ。一体何がいけないのかしら……?」
「お嬢様、お申し付けいただければ私がお手伝いいたします」
「本当? それならお願いできる? 作るのは得意なんだけど、売るのがこんなに難しいとは思っていなくて……」
本当に困った時はすぐにアレスが必ず助けてくれる。ろくな給金も払えていないのに、申し訳なくてたまらない。