幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
クララの報告を受けた後、
ギュンターはユリウスの執務室を訪れた。

ギュンターが入室すると、
ユリウスは半分顔を上げてその姿を確認して再び目線を下に落とす。
ギュンターはユリウスの目の前で仁王立ちになった。

「何か用か?」
ユリウスがおもむろに口を開く。
「クララから聞いた。王妃様に乗馬を許可したって本当か?」
「あぁ、その話か。」
ギュンターの苛立ちなどまるで気にしていないようで、
ユリウスは涼しげな顔で答える。
「したよ。王妃が乗りたいというから、ルールを厳守するならと。」
「はぁ~」
ギュンターは盛大にため息をついた。
「何か文句でもあるのか?」
「大ありだよ。後先考えずにそんなこと許可すんなよ。どんなにルールを作ったって、絶対はないんだ。王妃様にもしものことがあったらどうする。」
「たかだかポニーに乗って馬場を歩くだけだ。ラーデマッハー大尉が常にポニーの手綱を引くように言ってある。」
「ユリウスたちにとったら乗馬はちょっとした息抜きかもしれないが、護衛する側にとっては命がけなんだ。主人にもしものことがあったら、責任を取らなければならないのは俺たちだからな!」

ギュンターのあまりの剣幕にユリウスが作業していた手を止めて顔を上げる。
いつも穏やかでひょうひょうとした男が、こんなに感情をあらわにするのを初めてみた。
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