幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
ギュンターが優しく声をかけると、クララはわずかに目を開いてギュンターの姿を捉えた。
「団長。王妃様は気を失っておられます。お体に問題ないか、至急医師の元へ。」
「うん、分かっている。」
ギュンターはすぐさま部下に命令して、意識のない王妃を医務室へと運ばせる。
落ち着きを取り戻した馬を厩舎に戻すように馬番に指示して、
クララに向き直る。

クララの呼吸は浅く、額には脂汗がにじみ出ている。
直射日光の当たる今の場所では辛いだろうと、クララを木陰に移動させた。
うわ言のように弁明を繰り返すクララを慰めようと、
ギュンターが何気なくクララの肩に手を触れた時だった。
クララが顔を歪めて悲鳴をあげる。

「お前、骨折しているんじゃないか?至急、検査だ。」
言うが早いがギュンターはクララをさっと抱き上げ、
部下に現場検証と発砲の証拠品を探すように指示して、
医務室へと一目散に駆け出した。
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