幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
クララは王妃の下敷きになって落馬したことと、
興奮したポニーと接触したことによって、
全身打撲と肩を脱臼しており、肋骨にもヒビが入っていた。

命に別状はないが絶対安静ということで、
今は王城の医務室で静かに横になっている。
先ほどラーデマッハー中将と一緒にユリウスが見舞いに訪れた。
ラーデマッハー中将は包帯だらけの娘の頬を撫でてはいたが、
ユリウスやギュンターのことを責めるようなことはなかった。
(「王妃様を守ることが娘の使命ですので。」)
ユリウスもギュンターに
「むろんラーデマッハー大尉を処罰するようなことはしない。王妃の命を守ってくれたことに褒美を送りたい。」
と言ってくれた。

ギュンターが枕元にいたところでクララの容態が良くなるわけではなかったが、
なぜか離れがたくてギュンターは一日中そこに座っていた。
日もだいぶ傾きかけてきた頃、
看護師が薬を持ってやって来た。

「あら、騎士団長様がいらっしゃったんですね。」
看護師が声をかけるので、ギュンターは思わず会釈する。
「クララ様のお薬なんですけど、眠っていらっしゃるようなのでこちらに置いておきますね。団長様がいらっしゃるときにクララ様がお目覚めになったら、クララ様に飲むようにお伝えしていただけますか。」
「分かった。」
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