幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「よくやった。」と同期や父が褒めてくれる一方で、
クララの母カサンドラの反応は正反対だった。
クララの病室に飛び込むやいなや、娘にすがりついて大泣きした。
「お嫁入り前の大事な身体がこんなことになって!だから私はあなたが軍隊に入るのに反対したのよ。あなたもどうかしてるわ、クララの入隊の推薦状を書くなんて!」
カサンドラは怒りの矛先を同行していた夫に向けた。
ラーデマッハー中将はいつもの威厳はどこへやら、
妻の𠮟責に返す言葉がないとばかりに沈黙している。

「私の可愛いラーラ、お屋敷に一緒に帰りましょうね。」
母の言葉にクララは驚く。
「お母様、私は帰らないわよ。騎士団での任務があるもの。怪我が治ったら復帰しなくちゃ。」
「その件だけどね。お前の身体が動くようになるまでまだしばらくかかるし、陛下も実家で静養するようにとおっしゃっていただいている。ラーラも実家の方がくつろげるだろうから、ご厚意に甘えさせてもらうことにしたよ。」
「そういうわけだから、久しぶりに親子水入らずよ。お母さん、とっても嬉しいわ。」

クララは入隊以来、ゆっくりと実家で過ごしたことがなかった。
入隊当初こそちょくちょく帰っていたが、
王妃の護衛になってからはずっと王城で暮らしている。
せっかくの機会だから久しぶりに実家に帰るのも悪くないかもしれない。
ウキウキとはしゃぐ母親に引っ張られて、
クララは王都内に構えるラーデマッハー伯爵家の屋敷へと帰省したのだった。
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