幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
久しぶりに訪れたその村は
王都グラディオーレンと比べると物寂しい。
道路もきちんと舗装されていないところが多く、
建物も改修が必要なほど古びていた。

昔の記憶を頼りに生家のあった場所を訪ねると、
そこには家がなく更地になっていた。
(ここではなかっただろうか?)
「誰か、お探しですか?」
立ち尽くしているギュンターを不憫に思ったのか、
近所の女性が声をかけてくれる。
「フーケさんのお宅を探しているのですが。」
「あー、フーケ男爵家ね。何年か前に引っ越したのよ。この道を真っすぐ行って2つ目の角を右に曲がったところよ。赤い屋根のお家だからすぐ分かると思うわ。」
親切な女性に礼を言って、教えられた道を進む。
すると、かつての生家より幾分大きく小ぎれいな家が姿を現した。
(こんな家に住んでるなんて、幸せに暮らせてるんだな。)
久しぶりに会う自分に気づいてくれるだろうかと若干緊張しながら、
ギュンターはドアを叩く。

するとカチャっとドアが開いて、可愛らしい女の子が姿を見せた。
「お兄ちゃま、どなた?」
「君は、アメリアか?」
その女の子はギュンターのすぐ下の妹だったアメリアによく似ていた。
「アメリアはお姉ちゃまよ。私はリザ。お兄ちゃまはお姉ちゃまのお友達なの?」
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