幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
両親とケンカ別れしたギュンターが向かったのは恋人のカロリーネのところだった。
カロリーネとは15歳の頃に知り合って、もう4年の付き合いになる。
カロリーネは貴族出身ではなく、裕福な商人の家の娘だ。

貴族家門となると身分の釣り合いのとれた家の相手との政略結婚が一般的だったが、
計算高いロートシルトの父は自分の商売で有利になる相手であれば
民間出身でも問題ないというスタンスだった。

カロリーネとは最初から不思議なくらい馬が合い、
両家から付き合うことに対しての反対意見が出なかったので、
ギュンターは貴族の子息としては珍しい純愛を貫いていた。
賢くて優しいカロリーネは良き妻・良き母親になるだろう。
入隊して環境が落ち着いたら、カロリーネと結婚するつもりでいた。

「ギュンター、どうしたの?とりあえず中に入ってよ。」
突然のギュンターの訪問にカロリーネは驚きつつも家の中に迎え入れてくれた。
メイドが出してくれた紅茶を一口飲んで、ギュンターは話を切り出した。
「俺さ、軍隊に入ることにしたんだ。」
「何ですって!?軍隊に入るの。」
カロリーネは青天の霹靂と言わんばかりに甲高い声を出した。
「あなたはお父様の跡を継いで銀行家になるのではないの?」
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