幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
それ以来、カロリーネからはなんの音沙汰もなかった。
ギュンターはギュンターで、
軍隊に入ってからというものの訓練や地方遠征続きで
カロリーネに会いに行く暇がなく、
瞬く間に1年という月日が過ぎてしまった。

カロリーネから返事がない以上、
ギュンターはそれ以上追及が出来なかった。
軍に入るという話をしてから明らかにカロリーネの表情が曇っていたし、
カロリーネは軍人の妻は嫌だったのかもしれない。

音信不通状態だった恋人との再会は意外な形で果たされた。
王城で開かれる王妃主催の舞踏会である。
マグノリアでは2月から社交シーズンが始まるのだが、
その社交シーズンの始まりを告げるのが、王妃主催の舞踏会なのだ。
この舞踏会に招待された貴族たちは、
出席のために地方の領地から集まり、
数か月を社交のために王都で過ごすのである。
騎士団に所属するギュンターは普段は王城警備に就くことはないが、
この時ばかりはヘルプで駆り出される。

あくびを噛み殺しながら警備にあたっていたギュンターの目の前に
豪華なドレスに身を包んだカロリーネが姿を現した。
ギュンターの知らない男にエスコートされて得意げな笑みを浮かべている。
貴族しか招待されることのない舞踏会に平民のカロリーネが出席できるはずがない。
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