幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
カロリーネとはそれから一度だけ会うことがあった。

この舞踏会からしばらくして、国王が心臓発作を起こして急死する。
王位継承権第一位の王太子ユリウスは成人前の16歳であったため、
慣例に従えば成人するまでは伯父にあたる王弟が摂政を務めるはずだった。
しかし野心家の王弟は摂政の地位に甘んじることはできず、
自分こそが王位継承者に相応しいと王太子に反旗を翻したのだった。
王太子派と王弟派で国が2分し、王位継承戦争が勃発する。

ギュンターはユリウスが帝王学の一環で短期間だけ軍で訓練を受けた時に
たまたまパートナーを組む機会があってユリウスとは顔見知りだった。
自分より5歳も年下の少年が自分の運命に果敢に立ち向かう姿に感銘を受け、
当初は不利と見られていた王太子派に属して内戦に参加した。
長らく苦戦を強いられていたが、シュヴァルツ公の支持を得ることに成功し、
王太子派の勝利で内戦は幕を閉じる。
ギュンターは内戦時の巧みな戦術眼と献身的な功が認められて、
若くして騎士団長の地位に抜擢されたのだった。

カロリーネがギュンターの前に現れたのはそんな時だった。
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