幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「ラーデマッハー中将!」
会議終了後、入り口付近でごった返す人ごみをかき分けて
ギュンターは上官の名前を呼ぶ。
名前を呼ばれたラーデマッハー中将は歩みをとめてくるりと向きなおった。
「なんだ?」

「先ほど閣下からいただいた資料見たんですけど。入団リストに女の子の名前があって。何かの間違いでは?」
長い歴史の中で騎士団に女性が入団した例はほとんどなく、在団メンバーは全て男性だった。
「資料は全て確認してある。間違いはない。」
「しかもその女の子の名字、ラーデマッハーと書いてありました。閣下のお嬢様ということでしょうか?」
ギュンターの指摘にラーデマッハー中将の眉が少し吊り上がる。
「いかにも。クララ・フォン・ラーデマッハーは私の娘だ。だが、だからといって特別扱いは必要ない。小さい頃から兄と一緒に馬に乗って野山を駆けずり回っていたお転婆娘だ。お前の手でしっかり鍛えてやってくれ。」

(いやいや、特別扱いするなって言われても困るって。中将の娘なんてどう扱ったらいいんだよ。)
女性の新人を迎え入れること自体初めてなのに、その女性が自分の上官の娘ときている。
ギュンターは思わず頭を抱えてしまった。
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